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姫ノ舞「真」

南総里見八犬伝に描かれし伏姫様のモデルとなった里見種姫様のお御心を表す

南総里見八犬伝とは

日本古典中最長の伝奇小説である「南総里見八犬伝」に描かれし伏姫様は、実在した武家の姫である里見種姫様がモデルになったと言われています。


江戸時代の当時には珍しいヒーローものだった南総里見八犬伝は、勧善懲悪・因果応報の爽快な物語で、大ヒットをおさめました。

その登場人物である里見家は実在した武家ですが、何故里見種姫様をモデルにされたのでしょうか。


それは、誰しもが翻弄された戦国乱世で多くの命が失われていく中、それに流されずただ1人抗いて異をとなえ、仏様に縋りながら強い意志を貫き通したそのお姿に、感銘を受けたからではないでしょうか。


曲亭馬琴が晩年、目が見えなくなっても家族の手を借り、28年もの年月をかけて描いた南総里見八犬伝。そのモデルとなった里見種姫様はどのような想いであったか、里見家の歴史を振り返りながらご説明をいたします。

​実在した里見家とは

里見家は、鎌倉幕府討幕の立役者である新田義貞公のお家である新田家の分家になります。里見家も新田義貞と共に鎌倉幕府の討幕に貢献しましたが、室町幕府の誕生後は足利将軍家に仕えました。そして安房国(千葉県の房総半島南部)の国主となり、勢力取りまとめの大きな役を与えられます。

この時代はまさに戦国時代。足利持氏の死によって鎌倉府による関東支配は事実上終わりをつげると、鎌倉公方である足利家と関東管領である上杉家との関東を二分する対立に里見家は巻き込まれます。また、大勢力が対峙している間に、房総を狙う北条家が勢力を伸ばし里見家に攻め入ろうとします。

そのような中、身内同士でも争いが起きます。里見家の庶流である里見実堯は安房国をおさえる重要パートナーである正木家と手を組みますが、それを良く思わない嫡流の里見義豊は里見実堯を殺害します。殺害された実堯の息子、義堯は報復として叔父の義豊を討ち、その結果家督を継ぐことになり事実上の下克上が成されました。

その数年後、1541年里見義堯の長女として里見種姫(ふさひめ)様がお生まれになります。この種姫様が南総里見八犬伝の伏姫様のモデルになったとされています。

​​伏姫様のモデルとなった里見種姫様とは

里見種姫様は、正木家の当主時茂の嫡子である正木平七信茂に嫁ぎます。

この頃北条氏の攻勢がより一層強まり、正木家と共に上杉謙信の協力を仰ぎながら対抗します。

しかし、1564年1月に里見家と北条家の直接対決におよぶと、里見・太田の連合軍は大敗し、種姫様の夫である正木平七信茂は討ち死にしてしまいます。種姫様は25歳で未亡人となられます。

​その1年の間に次々と城を落とされ10月にはついには本拠地久留里城まで落とされてしまいます。

そのような中、種姫様は同じ年の8月に宝林寺を創建し夫を弔いながら、愛犬八房を連れて洞窟にこもられ、岩に観音様を掘ったとされています。

この種姫様に曲亭馬琴はインスピレーションを受け、深く仏教に帰依し読経に余念がない伏姫様という人物を誕生されたようです。

種姫様のお御心を表す舞「真」

さて、ここまでのお話で種姫様の置かれている状況や時代背景をお伝えさせていただきましたが、それでは里見種姫様はどのような想いで洞窟にこもられたのでしょうか。
 私は種姫様はご家族と上手くいっていなかったのではないかと推測しております。そうでなければ、このお家最大の危機に洞窟にこもっていられるでしょうか?この時代、女子(おなご)が道具のように扱われ、人質代わりに敵対する家に嫁ぎに行かされる事は当たり前でした。夫が戦で亡くなれば次の家、また亡くなれば次の家・・・また、戦は大金が必要のため借金をして臨む武家もあり、負ければ借金を返せずその返済のため遊女になられるお姫様もいらしたそうです。ほとんどのお姫様は時代の流れ、家の方針に抗えずに従うしかありませんが、種姫様は逃げることで抗おうとされたのではないかと思います。逃げることで命取られるかもしれない、そのような状況で部下を連れても身代わりとして命を落とさせるかもしれないし、もしかしたら途中で裏切るかもしれない。そう思ったので種姫様は愛犬の八房しか連れていかなかったのではないかと思います。自刃の道を選ぶお姫様は何人かいらっしゃるようでしたが、尼僧となり愛犬と共に洞窟にこもられる道をいかれたのは種姫様ただお一人でした。並大抵の決意ではなかったと思います。そしてそれを貫き通せるのは、本当にとても強いお方だったのだと思います。その後、種姫様は生涯、戦のない安寧の世を祈り続け、48歳で亡くなられたそうです。 
姫ノ舞「真」では、里見種姫様の想いを舞に表しており、各神社仏閣にご奉納しております。どのような想いであったか、何を伝えようとされていたか、考えが尽きることはなく、またその強さに感銘を受け、自分も強くなりたいと少しでも近づけられるよう、日々精進しております。

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珊瑚ノ宮 姫ノ舞「真」

里見種姫様 ~南総里見八犬伝 伏姫~

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